2023年2月9日(木)、北海道大学・株式会社QUICK共催で行われたシンポジウム「脱炭素社会への移行:北海道大学の気候変動への取り組みとマルチアクターでの共創」(協賛:株式会社日経BPコンサルティング)で、寳金清博総長が、「社会と歩む卓越~北海道大学」と題して、本学のビジョンと脱炭素社会における大学の役割と本学の取り組みについて講演しました。
シンポジウムでは、まずQUICK ESG研究所アナリスト石川氏から人類共通課題としての気候変動の現状と脱炭素社会に向けた大学の役割について論点整理が行われた後、寳金総長が、構想中の北大ビジョン「HU Vision 2030」を中心に、本学のサステイナビリティ推進に向けた歩みと脱炭素社会に向けての取り組みや貢献、そして大学の役割について話しました。
石川氏の解説で、大学には、研究・教育を中心に、キャンパス内でのカーボンニュートラルの達成や地域社会との共存による脱炭素社会へ貢献が求められており、これらを実現するためには、ガバナンスやファイナンス力といった大学経営が重要となることが示されました。一方で、国立大学への国からの運営費交付金は減少傾向にあり、大学には運営費交付金以外の多様な財源の確保が求められている点も指摘がありました。寳金総長は、北海道大学が創基以来のサステイナビリティ推進に向けた理念や取り組みを強みとして生かし、将来的に北大らしい持続可能関連債券(ESG債)の発行を検討したいとの意気込みを語りました。
パネルディスカッションでは、大学、企業、アセットオーナー、環境NGO/国連PRI、ESG専門家が集い、脱炭素社会に向けたマルチアクターによる共創の在り方とそこでの大学の役割、その取り組みが世界に与えるインパクト(サステイナブル・アウトカム)について、活発なディスカッションが行われました。
寳金総長が、「大学による社会的インパクトを測るのは非常に難しい。例えば、卒業生が社会に出た後に作り出すグラデュエート・インパクトは10年スパンで現れてくるもので測定は困難だと考えるが、未来のインパクトを評価して、たとえ金利が低くても大学が発行するESG債に投資家が投資してくれるのであれば期待したい」と述べたところ、ニッセイアセットマネジメント・大関社長は、欧米ではファイナンシャル・リターンが低くても、インパクト・リターンを評価して投資が行われているとコメントされました。また、脱炭素社会に向けて産官学金連携をさらに促進するために必要なことや障壁は何かという参加者からの質問に対して、森澤CDP理事ディレクター・PRIシニアリードは、組織トップが情報や知見を得て、世界が長期的にどこに向かうかを見据えて、誰と連携・協働するのが良いかを検討し判断する必要があると指摘されました。
一般に投資家の行動様式が高いファイナンシャル・リターンに左右される傾向にあるのは事実としても、サステイナブルな国際社会を維持・実現するための「マルチアクターによる共創」という大きな流れを作るためには、高崎経済大学の水口学長が述べた「世界が国際間での信頼関係を醸成し平和であること」(IPCC第6次評価報告書におけるSSPシナリオ・SSP1)を前提として、大学を含めた各アクターのガバナンス経営が重要となることが、改めて認識されました。
なおこのシンポジウムは、北海道大学が2022年にCDP気候変動質問書へ国内大学として初めて回答したことを契機に開催されました。
【シンポジウム概要】
「脱炭素社会への移行:北海道大学の気候変動への取り組みとマルチアクターでの共創」シンポジウム
日時:2023年2月9日(木)15:00~17:30
共催:国立大学法人北海道大学、株式会社QUICK
協賛:株式会社日経BPコンサルティング
協力:日経メディアプロモーション株式会社
プログラム:代表挨拶 株式会社QUICK 代表取締役社長 髙見 信三 氏
「気候変動の現状、脱炭素社会に向けた大学の役割の整理」
株式会社QUICK ESG研究所 アナリスト 石川絵里子氏
講演「社会と歩む卓越 ~ 北海道大学 Excellence & Extension」
北海道大学 総長 寳金 清博
パネルディスカッション「2050年カーボンニュートラルに向けた共創」
<パネリスト>
古河電工株式会社 執行役員 研究開発本部長 藤崎 晃氏
ニッセイアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 大関 洋 氏
CDP理事ディレクター・PRI シニアリード 森澤 充世 氏
高崎経済大学学長 水口 剛 氏
北海道大学 総長 寳金 清博
<モデレーター>
株式会社QUICK ESG研究所 エグゼクティブ・アドバイザー 広瀬悦哉 氏